エコクラのマスター

江古田に江古田倶楽部というブルースバーがあってね。
その筋じゃあ割と有名だよ。

俺は2002年~2005年頃までに西武池袋線の椎名町に住んでたことがあって、江古田は近いし、よくチャリで行ってた。

そのうちに、江古田倶楽部に頻繁に通うことになって、ライブやブルースギター教室なんかもやらせてもらった。

そこのマスターっていうのがなんとも、魅力というか魔力というか不思議な引力あってね。
小さくて、とてもじゃないが綺麗とは呼べないお店だったけど、良いミュージシャンもたくさん集まってたし、常連客も多かった。

極端なことを言うと、みんなマスターと話がしたかったんじゃないかと思う。
俺もそうだったしね。
まあ、話をしないとしてもマスターの部屋に遊びに行くようなそんな感じ。

けどマスターは、ただ単に優しいとかそういう感じではなく、無骨で無愛想で素直で実直で粋で、とにかく嘘のない人だったよ。
まるでブルースという歌を地で行くような人だった。

ライブをやらせてもらった最初の方はね。
けっこうダメ出しというか、アドバイスをもらったよ。
長くは言わないけど端的にいろいろと指摘してくれた。

でも不思議と嫌だとは思わなかったよ。
それは俺がマスターをリスペクトしていたし、感覚的にわかったんだよ、「この人はブルースが本当に好きで、なおかつその神髄をわかってるな」と。

当時俺は収入源がライブとキターレッスンしかなかったんだけど、お店の閉まってる昼間の時間にレッスンやリハーサルなんかで使わせてもらった。
タダでね(感謝)
そのうちに合鍵を作らせてもらって、頻繁に使わせていただいたよ。
俺以外にもお店を使わせてもらってるミュージシャンがたくさんいてね、たまにバッティングしたり (笑)

とにかくマスターは気前がよく、ミュージシャンやお客さんを大事にしてたな。
その大事にするっていうのも、金とか利益とかじゃなくて、ハートトゥーハートっていうか、対等な人間同士のコミュニケーションだったと思う。

お店にしてもマスターにしても決して万人受けするような感じではなく、ハマらない人は全くハマらないし、ハマる人はトコトンハマるようなエネルギーを持ってた。

そういう意味ではとてもレアな存在で、これからはもうああいうお店は出てこないと思う。

ある時マスターに黒いシルクハットをもらってね。
よく見るとアルマーニって書いてあった。
元の値段はけっこう高いと思う。
確か、「これが似合うような男になれ」みたいなことを言われたと思う。
しばらくはその帽子を被ってライブをやっていたよ。

何年か前にマスターが重い病気をいくつか患ってることを聞いて、お店も休業とかマスターが不在の時が多くなった。
それでもマスターはお店を閉めるという感じではなく、死ぬまでブルースやるぞっていう感じだった。

江古田倶楽部でライブをやって帰る時はね。
マスターやお客さんが必ず拍手をしてミュージシャンを送り出すんだ。
どんなに話が盛り上がっていても必ずみんな拍手をしてくれたよ。
それは何よりの喜びでね。
マスターの優しさから生まれたものだと思う。

不死身とも思えたマスター、2021年8月6日に逝去なされました。

もう一度、マスターに会いたかったなぁ。

エコクラは俺の椎名町時代の青春です。

ありがとうございました!
合掌

p.s 今の俺にアルマーニの帽子は似合ってますか?

たぶん「まだまだだよ」ってマスターは言うだろうな。。。