細部に宿る

朝晩、だいぶ涼しくなってきましたね。
引き続き、STORYのコーナーでは「ニューオリンズ・バウンド」という小説風の文章を書いていきます。
お時間があればお読みください。

ここからは文体をいつものブログ調に(笑)
八月はだいたい毎年、歌舞伎座に納涼歌舞伎を観に行く。
今年は坂東玉三郎が初めて納涼歌舞伎に出演するし、ほとんど新作のような演目だったので期待して観に行った。
結論から言うと、とても良かった。
映像を使った、歌舞伎では珍しい演出だったが、テンポよくセンスよく、「さすが玉ちゃん」と思った。

私が観たのは3階の安い席ではあるが、充分に素晴らしさは伝わったし、いろいろと考えさせられることが多かった。
具体的に言うと、私が観た席は¥5000の席で、歌舞伎座ではかなり安い方。
それで、その¥5000の中に何が含まれているのかを考えた。
場所代、光熱費、スタッフの人件費、役者のギャラ、衣装代、その他諸々。
プラスアルファ、もちろん玉三郎の才能やセンス、プロデュース能力など。
つまりは総合芸術であり、それを二時間くらい堪能して¥5000というわけだ。
舞台の内容が良かったので、私にはその¥5000はとても安いように思われた。

もちろんエンターテイメントの世界は、観る側の好みもあるし、実際、クソつまらないステージもたくさんあるが、素晴らしいものは金銭感覚を凌駕する。

それを考えると、私も興行師のはしくれとして身が引き締まる思いだし、
「細部にまで魂が入ってないと、お金はとれないなぁ」と思った。

自分の出来る範囲で精一杯やらせていただきます。
ライヴ、観に来て下さい。

ニューオリンズ・バウンド②

前回のつづきをブログにも載せます。

翌日からは、ニューオリンズの中心部、フレンチ・クウォーターなどを当てもなく散策した。
モーテルからフレンチ・クウォーターまでは、歩いて20分くらいの距離で、その間には雑貨屋や小さな商店などがポツリ、ポツリとあった。
あるお店の外側のガラス窓には、鉄格子のような頑丈なものが取りつけてあり、よく見ると、ひび割れがある。銃弾の跡だ、と思った。後で知った事だが、私がニューオリンズに着いた2、3日前にもこの付近で殺人事件があったらしい。 
私はフレンチ・クオーターまで歩き、昨夜、タクシ―で通ったバーボン・ストリートに行ってみることにした。盛り場というのは、昼と夜の顔が大きく違う。日中の太陽にさらされたバーボン・ストリートは、気のぬけたビールのような気だるい空気に包まれていた。「強物どもが夢のあとか・・・」と私は思わず呟いた。

バーボン・ストリートの外れに、「カフェ・デュモンド」という有名なカフェが見えたので行ってみることにした。そのお店の名物は「ベ二エ」と呼ばれる揚げパンのような、砂糖まみれの食べ物で、「カフェ・オレと一緒に食べるととても美味しいのよ」と店員の太った黒人の女性が教えてくれた。噂には聞いていたが、アメリカの飲食店は量も多いし、その上値段も安くて驚いた。
「ここなら毎日来ても良いな」と私は思った。
「カフェ・デュモンド」の近くには公園があって、ストリート・ミュージシャンが頻繁に演奏していた。
演奏曲は伝統的なデキシーランド・ジャズが多く、ニューオリンズを感じさせる音楽が溢れていて、「さすがルイ・アームストロングを生んだ街だなぁ」と私は感心した。
もちろん、演奏レベルも高く、日本でなら十分に良い値段で聞かれるであろう「銭の取れる音楽」だった。しばらく、ストリート・ミュージシャンの演奏を楽しんだあと、いくらかをチップとしてギター・ケースの中に入れて、またフレンチ・クウォーターあたりを歩きだした。

新しく

小説風の文章をSTORYのコンテンツの中で書いていこうと思います。
お時間があればお読みください。
とりあえず初回は、こちらのブログにも載せます。

「ニューオリンズ・バウンド」
私がニューオリンズに到着したのは22時を過ぎた頃だった。
見知らぬ土地への到着が夜の場合、何だかその街の別の顔を見せられているようで、心細くも不気味だ。空港からは、日本で予約していた「カプリ・モーテル」まで、タクシ―で行く事にした。私にとっては初めての土地で、夜も遅かったからだ。

タクシーに揺られてしばらくすると、ニューオリンズで一番の盛り場である、バーボン・ストリートが見えてきた。通りのあちらこちらから大音量のライヴ・ミュージックが聞こえてくる。
日本ではほとんどないことだが、バーボン・ストリートでは、狭いエリアにライブ・ハウスやライヴ・バーなどが密集している。そして、ドアをわざと開け放って、ライヴ・ミュージックの音を客引きに利用しているようだ。良い音楽が聞こえてくる店には、通行人が吸い込まれるように入って行く。「あぁ、本当にニューオリンズに来たんだ」という実感がじわじわと湧いてきた。
タクシー・ドライバーは親切心からか、せわしなく話しかけてくる。しかし、私は英語が良く分からない上に、通りの音楽や喧騒でほとんど聞き取れない。そうこうしているうちに、車はバーボン・ストリートを抜け、予約していたカプリ・モーテルに着いた。小さな安モーテルだ。

私は、単に安価だという理由からこのモーテルを予約したのだが、意外にも2階の程良い広さの部屋に案内された。
部屋には、ベッドとテレビ、ユニット・バスがあり、長期滞在の貧乏旅を考えていた私にとってはそれで充分に思われた。日本からのフライトの時差ボケと、さっき見たバーボン・ストリートの興奮で、なかなかベッドに入っても寝付けなかったが、これからの期待感を空想しているうちに眠りについた。

花伝書

世阿弥が著した花伝書(風姿花伝)は、昔から興味深く読んでいて、
機会があれば皆さんにも読んでほしい。
基本的には、能楽(芸能)に関しての心がけや真髄などを語っている書物だけど、
もちろん音楽に通じるところもあるし、人生にも通じる教訓がたくさんある。

一般的には「秘すれば花」という言葉が有名かと思う。
けど、僕が憶えてるもので印象的な記述のひとつに、
「上手はもちろん、下手も見よ」というような内容の文章がある。
若干自分なりに飛躍して解釈してるところもあると思うけど、
要するに、「上手い人の芸だけではなく、下手な人の芸もしっかり見ろ」ということだと思う。
これはなかなか実は難しいことであるが、下手な芸を分析すれば、おのずと、どうすれば上手になるかもわかるし、
確か世阿弥は、下手な芸の中にも必ず良いことろがあると書いていたと思う。

結局、謙虚さにも通じる心得。
僕も自慢じゃないけど、つまらん舞台とかステージ(音楽)、落語とかたくさん見てきたけど、
「これからはもっともっと謙虚に見ないとなぁ」と思うし、分析も必要。

ちなみ風姿花伝は世阿弥の著作ではあるけど、基本的には世阿弥の父親である観阿弥の言葉を元に世阿弥が編集、編纂したもの。
世阿弥もすごいけど、観阿見もすごいね(笑)

それでは皆さん、暑さに気をつけて!

NEXT STAGE!
9月7日(土)武蔵中原ライフ
OPEN:19:00 START:19:30 ¥1500(1ドリンク付き)
出演:冨井セイジ(ボーカル、ギター、ピアノ、ハーモニカ)、Gen(ブルース・ハープ、ギター)